山日記

2,000年6月25日〜27日 屋久島 宮之浦岳
注意!重い画像です。

6月25日 白谷雲水峡
 羽田で鹿児島行きの始発に搭乗しようとしたら、手荷物チェックでガスボンベの持込みができないことを知らされた。うかつであった。確か山のメーリングリストで話題にしていたのを思い出した。空路で北海道へ渡り、どこのショップが最も近いか、というものだったと思う。もっとよくメールチェックをしておけばよかった。結局「預かり」ということにしたが、わざわざ羽田まで受け取りにくるのは電車賃の方が高い。それにしても屋久島でガスボンベがすぐに手に入るだろうか、それが少し心配になってきた。
 鹿児島で乗り換えの飛行機が遅れていた。その間に屋久島のスポーツ店を探してみた。空港からそれほど離れていないところで手に入ることがわかってひと安心。屋久島へはYS−11であった。たぶん初めて乗ると思う。振動音には凄みがあり、これぞ飛行機というものだ。主翼の横の席でプロペラがまじかに見え、とてもおもしろかった。その窓から待望の宮之浦岳など屋久島の峰々を展望することもできた。思ったよりも険しく荒々しい山容である。
 空港の建物を出たところにザックを置いて、ガスボンベを売っているショップまで歩き始める。駐車場から近道の階段を登って環状道へ出たところでレンタカー屋さんに声をかけられる。話を聞きながら、登山口までのタクシー代と帰路の林道歩きや不便さなどを考えればいい選択かなと思い借りることにした。宿も安いところを紹介してもらって、レンタカーに乗り、さっそくガスボンベを買いに行く。次に「でたらめ」という名の民宿へ行きチェックインする。といっても夫婦だけでやっている素泊まりの民宿で、宿泊料が格安なことが自慢で宿の名をつけたらしい。挨拶を済ましてすぐに白谷雲水峡へ向かう。レンタカー屋で是非行けと薦められた場所で、2時間ほど歩いたが確かにいいところだった。弥生杉などの大木もすごいが、苔むした原生林は世界遺産に登録されたのもうなずける素晴らしいものだった。この原生林を見るだけでも屋久島に来た甲斐があると思った。
 途中、コンビニで夕飯を買って宿「でたらめ」に帰る。宿の主人のサービスで今日獲ってきたばかりのトビウオの刺身に舌鼓を打ちながらビールを飲む。この宿の主人は脱サラ組で、ロッククライミングなどでかなり活躍していたらしい。永田岳のローソク岩の冬期単独初登頂をしたという。しばし歓談したあと、寝たのは一人部屋だったが、大きな蜘蛛が出てちょっと気味が悪かった。

6月26日  宮之浦岳
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淀川登山口5:44―――淀川小屋―6:44 小花之江河―6:54 花之江河―7:09 黒味岳分岐―7:30投石岩屋―8:23 宮之浦岳への最終水場―8:42 栗生岳―8:55 宮之浦岳?9:05 発―9:21 焼野三叉路―9:47 最低鞍部―10:08 鹿之沢小屋分岐―10:15 永田岳?10:29 発―10:31 鹿之沢小屋分岐―10:58 最低鞍部―11:24 焼野三叉路?11:28 発―11:50 宮之浦岳?12:08 発―12:19 栗生岳―12:34 最終水場?12:38 発―13:22投石岩屋―13:45 黒味岳分岐―13:48 花之江河?14:13 発―14:20 小花之江河?14:23 発―15:18 淀川小屋?15:21 発―15:55 淀川登山口着
 未明にレンタカーで宿を出て、中腹で夜明け迎える。紀元杉などを眺めながら淀川登山口に着くとすっかり明るくなっていた。林道は登山口から通行止めとなっている。登山口はちょっとした広場になっていて、10台くらいは駐車できそうだが、今は私の車だけだ。トイレのロッジ風の建物が立派で、登山届の専用ボックスもある。準備中に若いカップルが来て、先に出発して行った。天気は曇りだが晴れ間も見えて、まずまずというところ。地元の人の話ではもう梅雨明けしているようだ。
 登山口からところどころくくりつけの階段のあるしっかりした道を進むと、もう廻りは原生林である。わずかに上りはあるが少しずつ下っている。帰途の最後のふんばり場所だろうから、「あと少し」ということがわかるよう目印を憶えておく。エアリアマップのコースタイム以上かかって淀川小屋に着く。最初の予定ではここで1泊するはずだった。新しくもないが中はきれいで、良く清掃されている。恐らくボランティアで定期的に掃除をしているのだろう。すぐそばに川があり、流れは緩やかな淵状になっていて、水はきれいにすんでいる。屋久島の川には確か山女がいると聞いた。しかし、ロッドを携帯することなど思いつきもしなかった。
 ここから先発したカップルと前後しながらひたすら登る。先頭を歩くと蜘蛛の巣がうるさい。しばらくして谷が覗けるやせ尾根に出るとオオルリらしき鳴声がする。双眼鏡は持って来ていないのでビデオカメラをズームアップして探してみると、はるか遠くの樹上でさえずっているのがぼんやり見える。白と黒と青がぼんやり霞んで見えるだけだがオオルリと確信する。
 土砂の流失を防ぐための施工で道はとても整備されているが、雨の多いこの地域ではそれも限界があるようだ。前方がパッと開けて小花之江河に着く。ほかに一人もいないし、ガスがかかっているので、想像していた以上に良い景観だ。石楠花がわずか咲き残っている。そこを抜けてまもなく花之江河に着く。さらに広い谷地で、休憩をとる人でずいぶん賑わう場所だろうがやはり誰もいない。キジを催して森の奥まで入ると、だいぶ古くて骨も崩れてしまった鹿の屍があって、ぞーっとするも所嫌わずで、その目の前で用を足した。屋久島に熊はいないから、その点では安心できる。キジうち休憩だけで先を急ぐ。黒味岳への分岐を過ぎ、投石岩屋(確かに大きな岩の下に空間があり雨露を防いでビバークできそうなところ)あたりもガスが覆って遠望ははきかない。うっとーしく重い大気に包まれていて、この環境が木々を大きく育てているのかと思う。しかし雨が降らないだけラッキーだろう。樹林限界を抜けても雲の中に入っているのか物憂い雰囲気は変わらないが、開けた笹原や広い尾根の緩やかな登りになるとさすがに明るくなり、雲も薄くなったのか気温も上がってきて汗が吹き出る。先発カップルを追い抜き、もうはっきり見え出した山頂へ向けてひたすら進む。
 山頂は広くなだらかだが、連なっているであろう峰々はやはり雲に厚く覆われている。上空は風が強いのか雲の流れは速いので、かすかな期待は持てる。昼飯を食ってしばらくすると、例のカップルが「一瞬雲が切れて峰が見えた」と騒ぎ出す。私もカメラを構えて待ち構えると、ほんのつかの間、向かいの稜線の一部が顔を見せる。でもそこまでだった。
 下りは打って変わって素晴らしいものになった。雲に覆われているのは山頂だけで、50mも下ると緑が雄大に広がりまぶしいほど明るい。大きな岩がなだらかな稜線のあちこちに鎮座している景観が面白い。地質と気候の造山の妙であろう。沢の水は生温いがおいしい。疲れも忘れてとても気分良く歩くことができた。途中、黒味岳に立ち寄る。花之江河が眼下に見えるし、モッチョム岳の山容が迫力がある。はるかに海が広がり、島にいることを実感する。
 
6月27日 縄文杉
 宿で知り合った女性3人組と一緒に車で尾立ダムへ向かう。大阪から来たらしいが、山道の運転が不安だったらしく、昼の弁当で運転手に雇われた。荒川口からトロッコ跡を進むのだが鉄橋がいくつもあり、つかまるところがないのでかなりビビる。女性らは平気で写真を取り合っている。線路の枕木歩きは疲れる。板を渡しているところもあるが、そうでないところは歩きにくい。
 長い枕木歩きから開放され、大株歩道入口から山道になり、まもなくウイルソン株に着く。話に聞いた通りの巨大さだ。洞の中は大人が何人も立っていられる広さで、水が流れていて祠が祭られていた。そこからは登り下りを繰り返し、名のある大杉、特に大王杉は見事だった、を見物しながら原生林を楽しんで行くと、やっと縄文杉に到着する。展望用の櫓が組まれていて、その急な階段を上がると、圧倒的な迫力のある縄文杉の前に立つことができた。神々しい、というのだろうか、大木は見ているだけですごい力があると思う。
 私の飛行機の時間があるので急いで下った。トロッコ道ではかなりハードに歩き急いだ。女性3人が、3人とも私より年上だと思うが、がんばって歩いてくれたおかげで、どうやら間に合う時間に下山できた。宿を引き払い、レンタカーを返して雲上の人となる。飛行機の便がなくて今日中にはどうしても四国に渡れないので、鹿児島空港近くで宿を探す。探し当てた空港近くのビジネスホテルの主人が迎えに来てくれた。飲み屋と兼ねているらしく、食事をする場所を探す手間が省けた。コインランドリーを教えてくれ、そこまで行くために車も貸してくれた。帰りに余計な荷物を自宅に送り返す。これで身軽になった。隣接する飲み屋の食事は満足するものだったが、車を貸してくれるなどの御礼も意識したので食いすぎ、飲みすぎてしまった。明日は石鎚山の麓で1泊の予定。

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