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岩木山から八甲田へ向かう。昨日こちらへ来るときもそうだったが、カーナビは弘前市の市街地を通る道を指定するのでその通り従ったが、その道がやけにくねくねと、あっちに曲がりこっちに曲がりするので閉口した。どうやら市街を横断する大きな道路がないことによるようだ。さすがに津軽藩の都だった屈指の城下町であり、旧い街ほど道は細く複雑なようだ。
予定より1時間遅れで酸ヶ湯温泉に着いた。大きな駐車場が満杯で、出て行く車をじりじりしながら待ってやっと駐車する。あとで気付いたが大駐車場がこの上にもあって、そこなら駐車の苦労もそれほどなかった。しかも登山口に近い。酸ヶ湯温泉はさすが有名なので湯治客や立ち寄り客が多いのだろう。建物も大きく何棟もあり、古びた情緒が残っている。
東北道を越えて東に向かった頃より断続的に雨が降っていたが、ここでも雨は降り止まない。カッパを着、スパッツを着け、傘を差して出発する。国道脇から鳥居をくぐり、谷に沿った森の中、古い道らしく中央がかなり抉れたところの多い緩やかな道を行く。この時刻になると下山者とすれ違うことが多くなる。連休だから多くの人が降りてくる。ちゃんとカッパ着用の人もいれば、雨具無しでずぶぬれの人も少なくない。さすがにこの時間に雨では登る人はいなそうだが、途中で若い白人がふたりすごい勢いで追い越していった。40分ほどで道は森を出て谷沿いになる。地獄湯ノ沢といわれる谷は火山特有の景観で硫黄に表面を覆われた岩床も混じって長く続き臭気もあるが、この谷の周囲は鬱蒼とした森で、今回通ったところだけで推し量ると、火山活動は岩木山よりも古い時期に終わったのではないだろうか。ここで一服していると、さきほどの若いふたりが大きな声で下に向かって叫び出した。...waiting...と聞こえたから後続の仲間がいるのだろう。そのうちに、これも若い白人女性ふたり、まだハイティーンに見えるとても可愛い、が登って来た。ひとりは全く雨具も着けずちょっと心配になるが、本人はとびっきりの笑顔で私に挨拶をくれ、濡れることなど全くヘッチャラなようだ。若い男達は女性をおいてまたどんどん登って行く。雨が強くなり、さすがに女性達は途中の木の下でカッパらしき簡易雨具をつけていた。このあと山頂まで、男ふたりは女の子を待つために私に道を譲り、またすさまじい勢いで追い越すということを何度か続けて登る。その度に声を掛け合うが、とても陽気で気のいい連中だ。谷沿いの岩の道が終わって再び樹々の中の道になると緩やかになり、登りきってすぐに広い湿原が現れた。仙人岱である。前方に小岳がガスの間を見え隠れし、右手へ仙人岱ヒュッテの道がある。木道を歩きながら進むとイワイチョウのような咲き終わった茎が林立している。あとで分かったが、ヒナザクラの群落らしい。気持ちのいい草原が終わると割合急な登りになる。雨も時折強く降るようになった。途中まで登って振り返ると雨に煙った湿原がきれいだ。木々が途切れて岩礫の道になり、途中の小さな池、鏡沼を過ぎると頂上が間近になる。流土留めの階段を登り詰めると平で広い山頂に着く。高山植物保護のためか木の柵が巡っている。雨雲がよぎるので遠望は利かないが、眼下の湿原と小岳など近くの山並みのコントラストがきれいだ。頂上直下で白人男性ふたりに抜かれたが女性達もすぐに着いて歓声を上げている。彼らと写真を撮り合う。この雨だし時間も遅くなったので私は予定の毛無岱コースを止めて元の道を戻ることにしたが、彼らはそのコースを行くらしく、大きな声で気合を入れ合い、唄まで歌って元気に降りて行く。白人のパワーと陽気さと人懐っこさと礼儀正しさ、女の子達の魅惑的な容貌とすらりと長い足には、全く圧倒されてしまった。
酸ヶ湯温泉前の駐車場とすぐ上の大駐車場との間のカーブにある道からキャンプ場への道があった。奥に事務所があり、管理人さんに聞くと少し歩いて荷物を運ばなければならないらしい。サイトは雨に濡れていい敷地ではないが草地を選んでテントを張ることにする。それにしても50〜60mもの荷物運びが大変なので、キャンプサイトまで続く小道の入口にある通行禁止の鎖をはずして車を一時的に入れることを管理人さんにお願いして、何とか許可をとれたのでだいぶ助かった。酸ヶ湯温泉に入りたかったがまだまだすごい人なので諦め、ビールとおでんを買ってテントに戻り、予定した三山を無事完登したことをひとり祝った。
翌朝は早めに出発して帰宅することも考えていた。何しろ行楽の季節として最適な時季の3連休最終日。高速道は大渋滞が予測されるというより必然だし、最低6時間以上の高速道の運転とくれば少なからずビビる。でもせっかくの東北、解禁直前ともなれば釣師はこのまま只では帰れない。というわけでキャンプ場から30分ほどの蔦温泉近くの蔦川へ入る。川の近くの駐車できるスペースには必ず何台かの車が停めてあった。蔦川本流の川幅はとても広くて大川だが、今の流れはその巾の1割にも満たない小川程度になっている。しかしドライなら必ずや反応のありそうな良い渓相になっていてロッドにラインを通すのももどかしい。ところが、フライを絶好のポイントにプレゼンテーションしても全く反応せず。ニンフに変えて指先に神経を集中しても無感症になったようだ。諦めて帰り、テントを撤収して出発したのはもう10時を過ぎてしまっていた。高速では充分に気を付けながら飛ばしたがちょっとした隙に覆面に捕まってしまい、結局高い旅になってしまった。それでも順調に3時半頃西那須野に辿り着いたがそこから大渋滞が始まった。結局自宅に着いたのは8時近くになった。自分にご苦労さんと言ってやりたかった。

山日記

2002.9 東北
9/15 八甲田山大岳

酸ヶ湯温泉1230−仙人岱13401430大岳14401530酸ヶ湯温泉
−酸ヶ湯キャンプ場



酸ヶ湯温泉

地獄湯ノ沢
登ってくるのが文中の若者達


ここを登りきると仙人岱

白人の若者に撮ってもらった

山頂直下の窪み
火口だったのか?


小岳と鏡沼

流土留めの階段
山頂はすぐそこ

湿原が美しい

酸ヶ湯キャンプ場








  





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