1999年7/27(火) 鳥海山 
   
滝ノ小屋口林道終点駐車場4:05−4:20滝ノ小屋−(八丁坂約20分休憩)−5:25河原宿小屋5:35−6:45アザミ坂下6:55−7:30アザミ坂上(稜線分岐)7:40−(約20分休憩)−9:00新山9:20−10:00アザミ坂上(稜線分岐)10:15−11:05河原宿小屋11:20−11:45滝ノ小屋−12:00駐車場=R7〜R112=月山姥沢小屋
湯ノ台「鳥海高原家族旅行村」のキャンプ場を3時過ぎに出て滝ノ小屋への立派な舗装道路に車を走らせる。行き止まりは道路幅が広くなり両側がずーっと駐車場になっている。駐車中の車も10台以上ある。雲がほとんどない上々の天気だ。東の空が染まってきて、少し明るくなるのを待って出発。石畳と言えるくらいの整備された道を進むとまもなく滝ノ小屋で、時間が早いせいかシーンとしているので中を見ずに通過。すぐに明るく開けた沢沿いの上部に滝が見え、潅木帯の急な斜面を進むとハクサンフウロなど花も多くなる。振り返れば暁の淡いピン色に染まった見晴らしが素晴らしく、東南の山々が次第に明るさを増してきて、気持ちのいい風も吹く。眼下に伸びた湯の台へ続くこんもりとした尾根から少しはずれたあたりの、緑の絨毯のように一面潅木で覆われた原の一部が黄金色に輝いているのに気付く。「これは素晴らしいお花畑ではないか!、キンバイかキンポウゲの大群落だ。」と感動する。しかし少し経ってもう一度そこを見ると、その黄金色のお花畑がどんどん大きくなっている。「?!」と思ってやっと気付いた。右の稜線越しに朝の光線が届いて緑が黄金色に染まっているのだ。愚かな勘違いであった。東の稜線から顔を出した、私にとってのご来光を拝んで、花々を鑑賞しつつ高度を稼ぐ。行く手を見上げると空に突き出たアンテナらしきものが見えてきて、小屋が近いのがわかった。道が小さな沢沿いに平らになるとすぐに、辺りが大きく開け、河原宿小屋に着いた。小屋は平屋で20人くらいも泊まれるだろうか、管理人の人もいる。周りはずーっと開けた平原で見晴らしよく、目指す峰が雪渓の向こうに大きく鎮座している。小屋のすぐ前を、浅い割に幅の広く段差のない沢がおいしそうな雪解け水をちゃらちゃらと流している。
両側にロープの張られた、大きな岩のごろごろとした道を沢沿いに行くと、いよいよ雪渓上を歩くようになった。雪が堅く締まっているシュカブラ状で踏み跡がほとんどなく、そのためか雪渓上に張ったロープがはるか上まで伸びていて案内してくれている。
雪渓歩きが終わるとすぐに急勾配なアザミ坂で、かなりのアルバイトを強いてくれる。登山道の両側に名前ほど多くのアザミはなく、咲いているのがチョウカイアザミというのかはわからない。このあたりでかなりくたびれてきた。やっとの思いで稜線に着くとその向こうの、荒々しい岩峰の外輪の峰が連なった先に最高峰の新山とそのすぐ麓に御室が見える。西側には尾根が高度を下げて伸びたその先に大きな沼、鳥ノ海があり、そのまた先の稜線上に小さく御浜小屋も見える。
稜線の道を少し進んで、行者岳付近から小屋へ向かう道を探すとその道が無い。おかしいと思って引き返すと大きな岩のすきまに通行禁止の立て札が立っているところがあって、どうやらそこがコースの入口らしい。崖の上から覗くと中腹をへつるような細い道が見え、初心者には危険なので通行止めになったのだろう。七高山手前から新山へ続く道は、100m程も急に下ってから御室への道へ登り返していて、ここに着くまでに体力をかなり消耗していたので見るだけでうんざりする。単独行氏が下りの途中で道をそれ、雪渓を経て新山への道に入る短縮ルートを取りはじめたのが見えたので、良くないとは思いながらも誘惑に勝てず自分も続いた。疲れた体にはこの近道は精神的にも助かった。山頂へは累積した大岩の上をよじ登るようにして高度を稼ぐ。こういう道はずーっと私の好みであったが、年のせいか疲れのせいかひょいひょいとは登れず、ちょっと悲しい。山頂には先着者が一人しかいなかった。東北の人で、「この鳥海山には積雪期に来るのがやっぱりいい、雪があった方が登りやすいし」と言う。雪山の経験がほとんど無い私にはうらやましい。晴れ上がって雲が上がる前の展望は素晴らしく、北は森吉山の向こうに白神山まで見えると教えてもらった。頂上は狭く、すぐに団体が大挙押し寄せてきて賑やかになった。彼らが下りにかかる前に立ち去ろうと思ったが、チャンスを逸して最後尾をのろのろ付いて行き、岩場で別ルートをとって追い越すと「急行さん」と揶揄された。
私にとってハードな路程だったので疲れ果て、下りにしては何度も休んだ。下りは相も変わらず苦手で辛かったが、途中に雪渓があったのでグリセードまがいで時間は短縮できた。河原宿あたりで11時をまわって、日差しもきつくかなり暑くなってきた。それでも次々と登ってくる。これから登る人はこの暑さとの戦いであろう。ちょうど12時近くに駐車場に着いた。
キャンプ場で汗だらけになりながら急いでテントを撤収し、R7〜R112を経て月山に向かう。今日も暑く、エアコンの温度を29度に設定しても冷気が吹く。月山山麓の国民宿舎志津小屋へ着く。ここはグランドのように石を取り去り平らに整備されたキャンプ場の一区画が無料で借りられたが、工事中のために車が入れず、サイトまではネコ(一輪車)で荷物を運ばなければならなかった。この志津小屋に来る途中にあったオートキャンプ場は広くてきれいで設備も良かったが、一人でも3,000円と単独者には高すぎるのでやめた。設営後、下の温泉場の「つたや」という立派な建物の旅館で湯に浸かる。小さいが桧風呂で、外に露天風呂もあるが小さすぎてくつろげない。サイトに戻ったら時計を忘れたのに気付き慌てて戻る。誰かさんの二の舞いになったら大変だ。高度計と磁石が付いているもので、この時計がないと山に登れないほど大事なものだったので、見つかってほっとする。まだかなり明るいうちに冷たいビールをぐいっとやり、目の届くところに誰もいないサイトで一人きりの晩餐の時をゆったりと過ごす。
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