水晶岳
7/12〜16 北アルプス 烏帽子岳水晶岳黒部源流から三俣蓮華岳鏡平から乗鞍岳


烏帽子岳

7/12(土)
立川11:23=(特急あずさ号)=松本13:42/14:04=(大糸線)=南大町14:54―信濃大町15:20/16:05=バス=大町温泉「ロッジ希林荘」  1泊目
 今回のメインは水晶岳、私の深田百名山登山の残り三山のうち北アの中央に座すこの山は、私の力では1泊や2泊ではとうてい無理なので、長期休暇を取って乗鞍岳も含めてやっつけてしまおうという計画を立てた。百名山もここまでくると、早く達成してわだかまりを捨て去り、あとは行きたい山に気ままに行くのがいいという心境になるものだ。今回の計画の目的は四つ、水晶岳と乗鞍岳と三つ目にコマクサの群落を見るということがある。34年前、大雪山高根ヶ原で初めて見たコマクサは高校生ながらも鮮烈な印象があった。その後何度か見てはいると思うが、去年九月に岩手山で咲き残っていたとんでもない季節はずれの一株に「群落を見たい」という思いが募った。99番目の乗鞍岳に立ち寄るために新穂高に下ることを優先し、コマクサの見られる烏帽子岳を選ぶとブナ立尾根を登ることになる。高瀬ダムまではタクシーに限るが、電車で前夜信濃大町まで入り仮眠するなど体力に不安いっぱいの私からすればとんでもないことだから前日に来て宿泊することにした。いろいろ宿を探した挙句、大町温泉の「ロッジ希林荘」なる民宿にし、アルプスタクシーにも予約した。宿の七千円、タクシーの六千円はやむを得ぬ出費とする。

「信濃大町駅

松本から大糸線というローカルな電車に乗って信濃大町に向かう。大町着の予定時刻を2分ほどオーバーして着いた駅で腕時計を見てはっとして、「こんなに閑散とした駅なのか?」とは思ったものの、降車する人が少なくなかったので慌てて降りた。駅名を確かめるや否や電車のドアが閉まった。タクシーなど絶対来るはずのない、駅舎がなくプラットホームだけの駅に来る次の電車は1時間半後だから歩くしかない。結果的にたいした距離じゃなかったし、足の調子が悪くないことも確認できたし、当然の如く次のバスの発車時刻はずっと先になったので買い物も出来た。ロッジ希林荘はバス停から5分ほど歩いた森の中にあり、宿の人はおかみさんと仲居さん、いずれも70は超えていそうなふたりだけで、客は私ひとりだった。温泉にも入ったしひとりだけで腹いっぱい飯も食った。この宿でひとつだけ気になったこと、裏の大きな金網のゲージに小型犬とラブラドールのような大型犬が一緒にいたが、小型犬はキャンキャン鳴くし大型犬は珍しくウヲッと下手な鳴きかたをする。ゲージの中を良く見ると糞だらけで、おそらく散歩もさせていない、実に可哀想な状態だったので納得すると同時に愕然とした。

7/13(日)
大町温泉6:00=(タクシー)=七倉ダム東電監視所6:20/6:30=(タクシー)=高瀬ダム6:50―不動沢橋7:00―濁沢尾根取付7:15/7:20―R(1645m)8:10/8:15―Rガレ場(1975m)9:15/9:20―三等三角点(2208m)9:55―R(2315m)10:30―烏帽子小屋11:30/12:10―烏帽子岳13:50―烏帽子小屋14:50    2泊目


 前日宿泊の選択は正しく、休養充分で翌日を迎えられた。5時に起床するとすぐ近くでキビタキのさえずりが始まっていた。宿では朝食と弁当も作ってくれた。6時にタクシーが迎えに来て高瀬ダムへ向かう。天気は曇りで雨が降ってきそうな気配も少し感じる。七倉のゲートが6時半に空くまで待つ間に登山届を出す。この付近は広い谷になっていてスペースが広く、クロツムギやら多くの鳥のさえずりが聞こえる。ここでタクシーがあと2台待っていて、自家用車も何台か駐車している。ここで自家用車からタクシーに乗り換えるのが多いのであろう。それでもこの時間に登るのは4〜5人のようだ。盛期にはワンサカ込み合うのだろう。2台のタクシーが先行して出発した。
七倉ダム東電監視所ゲート前」


「ロックヒルのダム」 「高瀬ダム、白い川原が不動沢」  「ダムの先がトンネル」

高瀬ダムはロックヒル型で東洋一だそうで、去年白山へ行く途中で見たものより確かにずいぶん大きい。タクシーはロックヒルの壁そのものにジグザグに作られた道路をダムの最上部まで登った。もう1台のタクシーには20台の若い男性ふたり―ふたりともとても礼儀正しい―が乗っていて、私のほうが先に一番手で歩き出した。


 
「不動沢橋」  「キャンプ場」 「濁沢」
 

ダムに続く長いトンネルを通って出るとすぐ吊橋の不動沢橋で、かなり長いが7〜8mの高さしかないから怖くはない。キャンプ場を通り過ぎ、広い河原に出ると濁沢の大きな滝が望め、そのはるか高みに稜線が見えた。残骸となった濁沢の元の橋よりもっと下流の簡易な橋を渡ってブナ立尾根の取り付きに着く。ここまでに先程の若い二人が私を追い抜き、あっという間に見えなくなった。運動誘発性喘息という厄介なものを背負い込んだので薬を吸入し、いよいよ登りにかかる。

 

「濁沢の滝と稜線」
 ブナ立尾根が日本三大急坂となっていたので多少ビビっていたが、ジグザグに登るのだし心配無用だった。しかし急登なのはその通りだ。荷物の重さは量っていないものの15kgまではないだろうと思うが、登っている間中ザックの重さを常に意識している状態ではあった。1時間に1本休憩のゆっくりペースで登っていると初老の単独行者がひとりと夫婦ペアに抜かれる。夫婦ペアは歩くのは早いが30分に1本とっているようなのでこちらが追いついてしまう。結局この夫婦とは途中相前後し、ほぼ同時刻に小屋へ着いた。1時間毎の休憩もタバコを吸っていた時は2本目をつける場合もあり10分以上も休んだものだが、今は行動食を少しと水を補給するとすぐに出発してしまう。写真を撮りながらだから何度も休憩を取っているようものではある。飲水では今回成功したのがポカリスエットやアミノ酸系のヤツだった。1日1L、粉末を2L分持っていったので3日間利用したが、人一倍汗っかきなのが自分で驚くほど汗が少なかった。体力の消耗も少なかったに違いない。



「ここまで登ってきた」
 「ニセ烏帽子が見える」
 「蓮華岳」

 
しばらく登るとニセ烏帽子が見える。不動岳や蓮華岳と思われる山々には雲が半分ほどかかっている。ひたすら忍耐の登りではあるが、カラマツソウ、ゴゼンタチバナ、ツマトリソウ、マイヅルソウなど定番の花が慰めになったこともあり、別段それほど苦しい思いをしないで稜線に上がれた。

  
  「不動岳」                「小屋の前から赤牛岳」          「烏帽子小屋の前」

          
小屋前のロープを張った外側にコマクサ         赤牛岳と薬師岳、立山

 稜線のすぐ下が小屋で目の前にパノラマが拡がっていた。雲はかかっているが赤牛岳を中心として私にとっては久々の展望である。大半は雨と覚悟しての今回の山行の一日目としては大満足である。しかも小屋のすぐ前の砂礫の中にピンクの塊があちらこちらに点在している。そう、コマクサの群落である。イワギキョウの鮮やかなブルーとともに、あでやかで、なまめかしくも気品ある容姿を見せてくれている。これで今回の目的の一つ目は達した。今回新調したデジカメにクローズアップレンズを装着して時間をかけて撮る。
 
  
ニセ烏帽子                 烏帽子岳                 薬師岳

烏帽子岳へ向かう。その途次、コマクサの群落がここあそこにあって実に素晴らしい。ニセ烏帽子を越えると本物にふさわしい優美な姿が現れる。灰褐色の岩肌、薄茶色の砂礫、濃緑色が織り成す色彩コントラストときれいな円錐形が見事にマッチしている。燕岳に雰囲気は似ていると思うが、生憎30年前に登った事実はあるがバテていたせいか記憶がない。裏側に回って鎖の付いた岩を攀じ登る。記念写真を撮ったところで雨がぱらついてきた。小雨で傘をさすまでもなかったが、天候が悪化した場合の明日からの行程が思いやられる。
烏帽子小屋の本日の宿泊者は3組4名だけだった。一組に一室ずつあてがわれる。1週間後には大混雑することが予想されるから信じられないほどの待遇である。小屋の若い女性からビールと酒を買ってのんびり過ごす。水も1L買う。3時半頃より雨が本格的に降り出してきた。食事が済んだ6時頃には一旦止んだが夜半から朝方にかけてずっと降っていたようだ。
                                       
               
             ニセ烏帽子から               烏帽子岳山頂

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