水晶岳(黒岳)

水晶岳(黒岳)

7/12〜16 北アルプス 烏帽子岳水晶岳黒部源流から三俣蓮華岳鏡平から乗鞍岳

714(月)
烏帽子小屋610―三ツ岳2844mの標識715R815820―野口五郎小屋855―野口五郎岳920930―真砂岳分岐1005―東沢乗越11051115水晶小屋12151235―水晶岳三角点1330―水晶岳13351340―水晶小屋1415    3泊目
          
前日に撮った烏帽子小屋から三ツ岳       三ツ岳手前から烏帽子岳を振り返って     三ツ岳を越えると槍ヶ岳が見えた

 昨晩は730に消灯だったので当然夜中に何回か目を覚ます。すべて雨の音がしていて憂鬱になった。朝食を済ませると小降りにはなったが鬱陶しい。朝食を抜いて早出予定の夫婦ペアが6時になっても出かけず、結局下山してしまった。こちらはある程度覚悟の上だったし目的があるから、小屋に泊まったもうひとりの単独行者が10分前に出かけた後を追うように小雨の中を合羽を着て出かける。歩き始めると思ったほど不快ではない。赤牛岳や薬師岳がシルクのショールを羽織ったように薄い雨雲に覆われているがその上の空はそれほど暗くない。後ろの針ノ木岳方面はほとんど見えないが、これから進む三ツ岳はよく見えている。30分ほど経つと雨は止み、周りの山の雲がとれて、だんだん展望が良くなってくる。まさに予想外の天気になってきた。三ツ岳の標識があったが山頂ではなく、その頂上を巻いて先のコルへ出ると槍ヶ岳が目の前にあった。思わず声を出して手を打つ。少し先にひとりいるだけで全く静かな稜線歩きだし、展望が良く花もそこかしこにいっぱい咲いているとなると、うれしくて堪えられない。ホシガラスやイワヒバリ、カヤクグリがかなりそばに寄っても逃げない。ルリビタキの声がこの稜線近くでもしばしば聞かれる。雷鳥の母子連れも可愛いが、頭頂が赤いオスを45mの近さで初めて見ることも出来た。

      
鹿島槍も見えてくる                大天井、常念岳も現れる            雷鳥の母子、雛は陰に隠れている          

      
薬師岳が大きい                  野口五郎小屋                     雷鳥のオス

 野口五郎小屋を通り過ぎる。あとで聞くと昨日の宿泊者はなかったそうだ。小屋の人が数人あたりに散在して、ビニール袋を持って何か採っている。ひとりに聞くと苔だと言うのでイワタケでも採って食するのかと思ったが、もうひとりに聞くと苔ではなく調査しているのだという。何か怪しいが気にせず先へ進む。
 野口五郎岳は大きくなだらかな山頂で立派なケルンも作られていた。ここで先行していた単独行者に追いついていろいろ話をする。何しろ今日は他の登山者に出会うことがないかもしれないのだ。その人は奈良の人でバスを予約しているので今日は三俣山荘まで行きたいという。私よりも10歳ほどは年上だが一昨日は鹿島槍に登ってきたというし、最近は本当に中高年の登山者が増え、元気が良い。私もその部類に入るのだろうが。
     
野口五郎岳                 水晶小屋へはこんな岩場をいくつも越えていく    水晶小屋から来た道を振り返る

真砂岳を大きく巻いて東沢乗越まで下るとさすがに疲れがでてきた。雲もかかってきて展望は利かなくなったが雨が降る気配はあまりない。ここからはナイフエッジや岩だらけの小さなコブを何度も乗り越えて行く。水晶小屋は聞いていた通り小さかった。それでも今日の泊り客は78人だと言うのでここに泊まることにした。今は雲がかかって周りはほとんど見えないが、晴れたときには三俣山荘よりも展望はすこぶる良いようだ。いよいよ水晶岳に向かう。途中まではお花畑の草原の中だったが、だんだん岩場の急登で登りにくくなり、道標のマークもあっちこっちと方向が定まらなくなる。赤牛岳に行くのは大変だろうと思う。三角点がある場所に着いたが標柱などの山頂を表すものが一切ない。通り過ぎたと思って引き返すとやはりすぐのところに標柱の立っている山頂があった。周りは真っ白で何も見えない。記念写真を撮ってすぐに引き返す。往復1時間ちょっとのはずだが、撮影などでぐずぐずしていたせいか2時間もかかってしまった。
  小屋は6畳ほどの客室に2段ベッドが付いていて定員20人でもきついくらいだろう。さっそく缶ビール2本、日本酒ワンカップ1本計1500円を購入しベッドに上がった。この小屋にも若くて可愛くしかも愛想のいい女性がひとりいて、目が和む。しばらくすると7人の初老グループと単独行者男女ふたりが着いて一気に騒がしくなった。夕方雲がすこし上がる。野口五郎岳はかすかにわかる程度だが、歩いてきた道の赤茶けた鋭利な稜線を垣間見ることができた。今になってひとり登ってくるのが見えたが、長い髭の老人でこの小屋の元番人ということがあとでわかった。同室客の話を聞いて小屋の周りを調べるとチョウノスケソウが咲き残っていて初めて見るのでうれしかった。カレーライスの夕食後はブロッケン現象が見られるといってみんな騒いでいたが、ちょっと遠すぎてはいたが本当にカラーの光背付きで見ることが出来た。消灯は8時だった。


水晶岳1へ  水晶岳3へ  水晶岳4へ  高山植物Tへ